毎朝、ゆっくり歩く海岸通りを すれ違う 自分と同じぐらい
老いた人がいます。
今日は、おもいきって声かけてみようかな・・・・・・
そんな偶然あるはずないけど、むかし知っていた人によく似て
いるから・・・・・
「おはよう ございます。」
「おはよう ございます。」
「お住まいは この近くですか?」
「はい。この近くです。」
「少し あったかくなりましたね。」
「はい。少しあったかいです。」
「お散歩は 日課ですか?健康にいいですね。」
「わたしは人を探して海岸まで来ています。」
はじめて、おうむ返しでない 彼自身の言葉が返ってきました。
「どんな 方?」
「わたしが 愛した人です・・・・」
「あらあら!その方は?」
胸が苦しくなって、海を見下ろせる堤防に腰を下ろしました。
太陽が昇ったばかりの空は、雲が多く、スモークグレーの隙間
からさまざまな色の光が海に反射し景色に色がついていく・・・
でも 今ここから見えるのは去っていく船に敬礼をしたまま
身動きひとつしなかった・・・・思い出の中の人・・・・・
「その方を探して毎日・・?」
「その方は幸せな方ですね。なにか手がかりは?」
「わたしは生涯で2回しか 彼女に逢っていません。
一度目はお見合いをしたとき。可愛らしくてはじめから好きに
なりましたよ。二度目はわたしが特攻の基地にいたとき。
お守りを持って逢いにきてくれたのです。」
・・・・やっぱりいちろうさんだわ・・・胸の動悸が激しくなりました
わたしだって あなたを・・・・・忘れられないでいたわ・・・・・
「お守り、見せていただけます?」
すっかり 隅が擦り切れていたけれど・・・・いつも体温が感じら
れる場所で 大事にされていたんだ・・・自分がさした刺繍の
いちろうさん・・・という文字をなでてみました。
「このお守りを作ったのは、わたしです」言うつもりではなかった
のにひとりでに くちびるが動いたのです。
言わなければよかった・・
いちいろうさんはにっこりして、言いました。
「あなたは、いい人だ。。でもわたしの探している人ではない。
お守りのなかに、彼女の黒髪が入っている。つやつやした豊か
な髪の一部です。頬がぷっくりとしていて、まばたきをする
音が聞こえそうな 美しい目をしていた・・・・・。」
風がでてきた。このばさまの白く細い髪はじきに ざんばらに
なるだろう。長年の引力にまぶたも勝てず、目にかぶさってき
ているし・・・・
でも いつまでもいちろうさんの中で、色あせないわたしは
ずーーーっと愛されていたんだし、一生ぶんのしあわせを
もらったのに、泣くことなんかないじゃない??
老いた人がいます。
今日は、おもいきって声かけてみようかな・・・・・・
そんな偶然あるはずないけど、むかし知っていた人によく似て
いるから・・・・・
「おはよう ございます。」
「おはよう ございます。」
「お住まいは この近くですか?」
「はい。この近くです。」
「少し あったかくなりましたね。」
「はい。少しあったかいです。」
「お散歩は 日課ですか?健康にいいですね。」
「わたしは人を探して海岸まで来ています。」
はじめて、おうむ返しでない 彼自身の言葉が返ってきました。
「どんな 方?」
「わたしが 愛した人です・・・・」
「あらあら!その方は?」
胸が苦しくなって、海を見下ろせる堤防に腰を下ろしました。
太陽が昇ったばかりの空は、雲が多く、スモークグレーの隙間
からさまざまな色の光が海に反射し景色に色がついていく・・・
でも 今ここから見えるのは去っていく船に敬礼をしたまま
身動きひとつしなかった・・・・思い出の中の人・・・・・
「その方を探して毎日・・?」
「その方は幸せな方ですね。なにか手がかりは?」
「わたしは生涯で2回しか 彼女に逢っていません。
一度目はお見合いをしたとき。可愛らしくてはじめから好きに
なりましたよ。二度目はわたしが特攻の基地にいたとき。
お守りを持って逢いにきてくれたのです。」
・・・・やっぱりいちろうさんだわ・・・胸の動悸が激しくなりました
わたしだって あなたを・・・・・忘れられないでいたわ・・・・・
「お守り、見せていただけます?」
すっかり 隅が擦り切れていたけれど・・・・いつも体温が感じら
れる場所で 大事にされていたんだ・・・自分がさした刺繍の
いちろうさん・・・という文字をなでてみました。
「このお守りを作ったのは、わたしです」言うつもりではなかった
のにひとりでに くちびるが動いたのです。
言わなければよかった・・
いちいろうさんはにっこりして、言いました。
「あなたは、いい人だ。。でもわたしの探している人ではない。
お守りのなかに、彼女の黒髪が入っている。つやつやした豊か
な髪の一部です。頬がぷっくりとしていて、まばたきをする
音が聞こえそうな 美しい目をしていた・・・・・。」
風がでてきた。このばさまの白く細い髪はじきに ざんばらに
なるだろう。長年の引力にまぶたも勝てず、目にかぶさってき
ているし・・・・
でも いつまでもいちろうさんの中で、色あせないわたしは
ずーーーっと愛されていたんだし、一生ぶんのしあわせを
もらったのに、泣くことなんかないじゃない??
