姉と弟は、うつむいて歩いていた。
弟の手の甲と顔にひっかき傷があり、血がにじ
んでいる。
「もう、けんかなんか やめときや」
「せやけど、わざと 僕にしゃべらして みんなで
笑うんやもん。」
二人は家庭の事情でお母さんと3人で北海道に
越してきたばかりだった。
「卑怯な人間は、よの中によーさんいてる。」
「分ってる。そのたんびに けんかばかりして
られへん・・・」
その時 かわいた白い地面に、黒い水玉模様が
つぎつぎと、現れた。
「わたる、雨や。」
「お姉ちゃん、あそこ。」
弟が指さしたところには、二人よりはるかに背が
高い ラワンブキが群生していた。
ふたりが 高い天井の葉や太くしっかりした茎に
感心していると、外はどしゃぶりの雨になった。
かすみが学校で借りた本を、読んでやっている
うち、二人ともすっかり眠りの世界へ誘われて
いった。
起きてから 二人は、・・同じ夢を見ることがある
だろうか・・・・あれは現実のことだったのかな
コロボックルと名乗った自分たちよりはるかに小
さい生き物が人差し指をだすと 飛んできて指に
ぶら下がった。左右の掌を合わせると、何人乗
かれるかおしあいへしあい、。座ってひざを少し
たてるとすべり台に利用した。
雨があがって 帰るとき、彼らは口ぐちに言った
「ちいさなことで くよくよするなよー」
「北海道にはでっかい自然があるさ きみの
ともだちだよ」
「自信をもつんだ算数100点だったろ?」
「また、きてもいい?」
「ああ いいさ いつでも おいで。」
だが 次の日 学校の帰り、ランドセルのまま
走っていったけれど、コロボックルたちはいなか
った。次の日も・・・次の日も・・・・・
いつしか大人になったわたると、かすみは
たまに誰にも話したことのない、あの時の話を
することがある。
夢だったのか、現実だったのか・・・何度考えて
もわからない。あの日を境に、泣き虫だった
わたるがやさしくて強い子になった。
かすみは、コロボックルは人の心に住むのかも
しれないなーと最近思う。
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2011年7月16日土曜日
2011年7月4日月曜日
うりんぼ
駅の階段で わたしはないていた。動けないでいた。
震えてた。
たくさんの人が 上下する階段のはじっこで 恐ろしさでかたまっていた。
何日か前、わたしは生まれた。広いおうちにいる、お母さんのおなかから ふたごの弟と一緒に生まれた。
母さんは、わたしと弟をかわるがわるなめて、おっぱいをいっぱい飲ませてくれた。おなかいっぱいで、眠る 母さんのそばは あったかくて やわらかくて・・・とっても気持ちよかったけど・・・・ある日わたしと弟はダンボール箱に入れられ、駅の近くの草むらに捨てられた。
わたしは 母さんをさがしに 箱を出て駅の階段で動けなくなったんだ。
いきなり女の子の声がした。
「わあーー かわいい!」
そしてわたしは抱きあげられて 女の子の家に連れて行かれた。次々出てきた おうちの人はわたしを見て、
「あらっ かわいい ねこちゃん」
「アネキ、そのミーミーいってるやつどうしたん?」
「おや、かわそうに 震えて おなかがすいてるんだ。」
おうちの人はわたしに、お皿にいれたミルクをくれた。
カアサン ドウシテイルカナ
オトウトハ オナカスカセテイルダロウナ
わたしは背中の模様で「うりんぼ」と名付けられ、その
家で飼われることになった。なんとか飢え死にはまぬがれたみたいだった。
わたしを拾ってくれた恩人はカスミちゃん16才。
その弟 わたしをいじめかわいがり、ワタル14才。
おばあちゃんは、わたしの食事がかりになった。
一番好きなのは この家の おばちゃん。
のみとり、うんちの世話をしてくれ いいこ いいこ
と なでなでしてくれる。この人は母さんみたいだ。
わたしは この家でぐんぐん大きくなった。
カアサン ドウシテイルカナ
オトウトハ ヤセホソッテイナイカナ
爪とぎするので、障子もふすまもボロボロになった
けど、みんな
「うりんぼか しかたないな」と笑うだけ
テーブルの花びんを割ったときも
「うりんぼか しかたないな。」
一日中昼寝してても
「うりんぼか なまけものだな。」
うりんぼ!と呼ばれ みゃーとでも返事をすると
「うりんぼは 天才だ!」と言われる。
けっこう わがままで 幸せに暮らしている。
カアサン ドウシテイルカナ
オトウトハ ドコカニイルノダロウカ
春が過ぎ、夏が来て、秋、 冬、・・・
あれから4年がたった。
ある日スーパーへのお買いものに、車に乗せてもらった。駅の近くのスーパーでドアが開いた時、ちょっと
そのあたりを散歩しょうと 飛び出た。
スーパーの裏口には、段ボールや生ごみやいろんな
ものがあって、面白い。きょろきょろしていたその時。
一匹の猫が現れた。背中にいのししの子みたいな模様がある。
「みゃー おまえこの辺の猫じゃないな?」
「あなた いつか 会ったことある・・?」
「みゃーもしかして?」
「もしかして・・・みゃー」
ああそれは 長い間 忘れられずにいたふたごの
弟だった。
「おねえちゃん、元気だった?」
「ずーっと元気だったよ。人間に飼われているの。」
「ぼくは、きままに野良猫してるんだ。」
「毎日 食べられるの?」
「食べられない時もあるよ。でもこうやって生きてる。」
それから わたしたちはかくれんぼをしたり、かけっこ
をしたり・・・遊んではしゃべり、しゃべっては遊んだ。
弟は、人間は恐ろしいと言い、わたしは優しいと言い返した。足の裏に感じる土の感触の気持ちいいこと!
木登りも楽しかった。どんどん登ると気持ちよい風を感じた。
その時だった。遠くでわたしを呼ぶ声がした。
「うりんぼーー」
「うりんぼーー」さがしている。まいごになったと思って。
「おねえちゃん ここで暮らそうよ。」
わたしは やせた弟をじっと見つめた。涙があふれて
やがて弟はみえなくなった・・・
わたしは4年間、弟のことを心配してきたが、それは
あの人たちと暮らしてきた4年間だった。
「さようなら・・」後ろは振り向かないで声のするほうへ
走って行った。
わたしは はしりながら 思った
食べるものがなくて、こわい人間しか知らなくて、雨の日寝るところがなくても 生き生きと、自由に暮らせる
幸せもあるんだと。
オトウトハ シアワセダッタヨ カアサン
震えてた。
たくさんの人が 上下する階段のはじっこで 恐ろしさでかたまっていた。
何日か前、わたしは生まれた。広いおうちにいる、お母さんのおなかから ふたごの弟と一緒に生まれた。
母さんは、わたしと弟をかわるがわるなめて、おっぱいをいっぱい飲ませてくれた。おなかいっぱいで、眠る 母さんのそばは あったかくて やわらかくて・・・とっても気持ちよかったけど・・・・ある日わたしと弟はダンボール箱に入れられ、駅の近くの草むらに捨てられた。
わたしは 母さんをさがしに 箱を出て駅の階段で動けなくなったんだ。
いきなり女の子の声がした。
「わあーー かわいい!」
そしてわたしは抱きあげられて 女の子の家に連れて行かれた。次々出てきた おうちの人はわたしを見て、
「あらっ かわいい ねこちゃん」
「アネキ、そのミーミーいってるやつどうしたん?」
「おや、かわそうに 震えて おなかがすいてるんだ。」
おうちの人はわたしに、お皿にいれたミルクをくれた。
カアサン ドウシテイルカナ
オトウトハ オナカスカセテイルダロウナ
わたしは背中の模様で「うりんぼ」と名付けられ、その
家で飼われることになった。なんとか飢え死にはまぬがれたみたいだった。
わたしを拾ってくれた恩人はカスミちゃん16才。
その弟 わたしをいじめかわいがり、ワタル14才。
おばあちゃんは、わたしの食事がかりになった。
一番好きなのは この家の おばちゃん。
のみとり、うんちの世話をしてくれ いいこ いいこ
と なでなでしてくれる。この人は母さんみたいだ。
わたしは この家でぐんぐん大きくなった。
カアサン ドウシテイルカナ
オトウトハ ヤセホソッテイナイカナ
爪とぎするので、障子もふすまもボロボロになった
けど、みんな
「うりんぼか しかたないな」と笑うだけ
テーブルの花びんを割ったときも
「うりんぼか しかたないな。」
一日中昼寝してても
「うりんぼか なまけものだな。」
うりんぼ!と呼ばれ みゃーとでも返事をすると
「うりんぼは 天才だ!」と言われる。
けっこう わがままで 幸せに暮らしている。
カアサン ドウシテイルカナ
オトウトハ ドコカニイルノダロウカ
春が過ぎ、夏が来て、秋、 冬、・・・
あれから4年がたった。
ある日スーパーへのお買いものに、車に乗せてもらった。駅の近くのスーパーでドアが開いた時、ちょっと
そのあたりを散歩しょうと 飛び出た。
スーパーの裏口には、段ボールや生ごみやいろんな
ものがあって、面白い。きょろきょろしていたその時。
一匹の猫が現れた。背中にいのししの子みたいな模様がある。
「みゃー おまえこの辺の猫じゃないな?」
「あなた いつか 会ったことある・・?」
「みゃーもしかして?」
「もしかして・・・みゃー」
ああそれは 長い間 忘れられずにいたふたごの
弟だった。
「おねえちゃん、元気だった?」
「ずーっと元気だったよ。人間に飼われているの。」
「ぼくは、きままに野良猫してるんだ。」
「毎日 食べられるの?」
「食べられない時もあるよ。でもこうやって生きてる。」
それから わたしたちはかくれんぼをしたり、かけっこ
をしたり・・・遊んではしゃべり、しゃべっては遊んだ。
弟は、人間は恐ろしいと言い、わたしは優しいと言い返した。足の裏に感じる土の感触の気持ちいいこと!
木登りも楽しかった。どんどん登ると気持ちよい風を感じた。
その時だった。遠くでわたしを呼ぶ声がした。
「うりんぼーー」
「うりんぼーー」さがしている。まいごになったと思って。
「おねえちゃん ここで暮らそうよ。」
わたしは やせた弟をじっと見つめた。涙があふれて
やがて弟はみえなくなった・・・
わたしは4年間、弟のことを心配してきたが、それは
あの人たちと暮らしてきた4年間だった。
「さようなら・・」後ろは振り向かないで声のするほうへ
走って行った。
わたしは はしりながら 思った
食べるものがなくて、こわい人間しか知らなくて、雨の日寝るところがなくても 生き生きと、自由に暮らせる
幸せもあるんだと。
オトウトハ シアワセダッタヨ カアサン
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