2011年7月16日土曜日

コロボックル

 姉と弟は、うつむいて歩いていた。

弟の手の甲と顔にひっかき傷があり、血がにじ

んでいる。

「もう、けんかなんか やめときや」

「せやけど、わざと 僕にしゃべらして みんなで
 笑うんやもん。」

二人は家庭の事情でお母さんと3人で北海道に

越してきたばかりだった。

「卑怯な人間は、よの中によーさんいてる。」

「分ってる。そのたんびに けんかばかりして
 られへん・・・」

その時 かわいた白い地面に、黒い水玉模様が

つぎつぎと、現れた。

「わたる、雨や。」

「お姉ちゃん、あそこ。」

弟が指さしたところには、二人よりはるかに背が

高い ラワンブキが群生していた。

ふたりが 高い天井の葉や太くしっかりした茎に

感心していると、外はどしゃぶりの雨になった。

かすみが学校で借りた本を、読んでやっている

うち、二人ともすっかり眠りの世界へ誘われて

いった。



起きてから 二人は、・・同じ夢を見ることがある

だろうか・・・・あれは現実のことだったのかな

コロボックルと名乗った自分たちよりはるかに小

さい生き物が人差し指をだすと 飛んできて指に

ぶら下がった。左右の掌を合わせると、何人乗

かれるかおしあいへしあい、。座ってひざを少し

たてるとすべり台に利用した。


雨があがって 帰るとき、彼らは口ぐちに言った

「ちいさなことで くよくよするなよー」
「北海道にはでっかい自然があるさ きみの
 ともだちだよ」
「自信をもつんだ算数100点だったろ?」


「また、きてもいい?」

「ああ いいさ いつでも おいで。」


だが 次の日 学校の帰り、ランドセルのまま

走っていったけれど、コロボックルたちはいなか

った。次の日も・・・次の日も・・・・・



いつしか大人になったわたると、かすみは

たまに誰にも話したことのない、あの時の話を

することがある。

夢だったのか、現実だったのか・・・何度考えて

もわからない。あの日を境に、泣き虫だった

わたるがやさしくて強い子になった。

かすみは、コロボックルは人の心に住むのかも

しれないなーと最近思う。