創作童話
ある町に小さな公園がありました。 ブランコと、すべり台、ベンチがひとつ、それに
1本の木が生えているだけ。人がふみしめるところ以外は、地面をしろつめくさがお
おっている。どこにでもあるような、古くからある公園です。
たくさんの、しろつめくさの中に、1本だけ4つ葉があるクローバーがありました。
変わり者と思われた四葉のクローバーには、友だちがいませんでした。話し相手は、
公園の大きな木だけです。四葉のクローバーは、いつもその大きな木に話しかけて
いました。
(のっぽさん、いつかわたしものっぽさんみたいに大きくなれるのかしら。)
(なれないんだよ。四葉ちゃん。わたしは木、きみは草だからね。)
(のっぽさん、いつかわたしものっぽさんみたいに人を幸せにできるかしら。)
(ぼくが? なにをしてるかな?)
(暑い夏の日、人はみなのっぽさんのこかげのベンチで、あー生き返ったと言ってるし・)
(うん、わたしは大きくなりすぎて、枝も葉っぱもボウボウだからね。)
(それに、冬はすっかり葉が落ちて、ベンチはあたたかいひだまりになるわ。)
(もう、長く生きてきたからね。わたしができることは、これぐらいしかないさ。)
(素敵なことだと思うわ。)
(四葉ちゃん、きみも人を幸せにできるさ。そのうちわかるよ。)
そんな話をしていると、いつもの二人が遊びにやってきました。その日は、ブランコ
もすべり台も使わないで、木のまわりでおにごっこをしたり、草の上に寝ころがったり
して遊んでいるのです。やがて、二人はクローバーを編みはじめました。女の子の方
が上手で、あっというまにかんむりを作りました。
「王様、頭にのせてあげましょう。」
「くるしゅう ないぞ・・・・」
その時です。
「じんくん、変わったはっぱがあるよ。」
「四葉のクローバーだね。かしてごらん。」
四葉ちゃんは、ぬかれてしまいました。
「ようこが、ぬいたはっぱなのに・・・・・じんくんどうするの?」
じんくんと呼ばれた男の子は、かばんから固い表紙の本を取り出して、四葉のクロー
バーを真ん中にはさむと、また本をかばんになおしました。
「どうするの?どうするの?」
「めずらしいクローバーだから、大事にとっておくんだよ。」
「うん、そうだね。めずらしいから大事にとっておこう。」
二人はしばらく遊んで、帰っていきました。
(のっぽさーん・・・・・さようなら・・・・)
(四葉ちゃん、きっときみは人を幸せにできる。そのために生まれてきたんだからね)
(こんなところにはさまれて・・どうやって・・何も見えない、人の顔も見えないのに・・)
(四葉ちゃん、さようなら・・・今日までの毎日が、わたしが幸せだった)
でも、最後の言葉は、もう遠ざかったじんくんのかばんにおさまっている四葉ちゃん
の耳には届いていませんでした。
それから、長い年月が過ぎ去りました。20年という年月にまわりの景色はすっかり
変わりましたが、置き忘れられたように、公園だけが昔のままでした。
のっぽさんの木陰のベンチに、一人の青年がやってきて木を見上げていました。
青年は、まぶしそうに見上げながらつぶやいていました。
「あのころのままだなあ」
そのとき、走ってきたのか息を切らせながら、女の人がやってきました。のっぽさん
には、その明るい笑顔が記憶のどこかにありました。
「おまたせっ。どうしたの?きょうは公園においでって。ずいぶんひさしぶりだけど、
この公園。昔、よく遊んだよね。」
青年は、上着のポケットから小さな箱を取り出しました。
「ダイヤモンドは、買ってあげられないけど、きみを一生守っていくつもりだよ。」
両手で箱をさしだしました。青年は結婚を申し込んだのです。
女の人は、ほほをほんのり染めて
「ありがとう。わたしも、一生ついていくわ。」
そう言って、箱を受け取り、ひざの上で開けてみました。
そこには、プラスティックでコーティングされた四葉のクローバーがついた小さな
リングが入っていました。
「わー、かわいい!もしかして・・これって・・・」
「うん、覚えていたんだね。あの日のクローバーだよ。」
(のっぽさーん・・・・あたしよ・・・)
(四葉ちゃん・・ひさしぶりだね。わたしが言った通りだろう)
(こんなに二人とも幸せそうな顔をして・・・・のっぽさん、わたし役にたったのね)
(そうだよ、人を幸せにすることは、自分が幸せになるということなんだよ。
わたしも、もう年だが、まだまだここでがんばるからね)
のっぽさんと、四葉ちゃんの再会は短いものでしたが、ほのぼのと、心があたた
かくなりました。
あの日の幼かった、じんくんとようこちゃんはすっかり素敵な大人になって、結婚
の約束をしたのでした。
それから、さらに数年の年月がながれ・・・・
古い小さな公園にある大きな木から、毎朝見えるものがあります。
誰かによく似た女の子の、赤いランドセルの横にぶらさがっている、
プラスティックでコーティングされたキーホルダー。走って学校にかけていく、
女の子の背中でゆれる四葉のクローバーのキーホルダー。
毎朝、毎朝、大きな木は、遠ざかっていく女の子を優しくみつめているのでした。
ある町に小さな公園がありました。 ブランコと、すべり台、ベンチがひとつ、それに
1本の木が生えているだけ。人がふみしめるところ以外は、地面をしろつめくさがお
おっている。どこにでもあるような、古くからある公園です。
たくさんの、しろつめくさの中に、1本だけ4つ葉があるクローバーがありました。
変わり者と思われた四葉のクローバーには、友だちがいませんでした。話し相手は、
公園の大きな木だけです。四葉のクローバーは、いつもその大きな木に話しかけて
いました。
(のっぽさん、いつかわたしものっぽさんみたいに大きくなれるのかしら。)
(なれないんだよ。四葉ちゃん。わたしは木、きみは草だからね。)
(のっぽさん、いつかわたしものっぽさんみたいに人を幸せにできるかしら。)
(ぼくが? なにをしてるかな?)
(暑い夏の日、人はみなのっぽさんのこかげのベンチで、あー生き返ったと言ってるし・)
(うん、わたしは大きくなりすぎて、枝も葉っぱもボウボウだからね。)
(それに、冬はすっかり葉が落ちて、ベンチはあたたかいひだまりになるわ。)
(もう、長く生きてきたからね。わたしができることは、これぐらいしかないさ。)
(素敵なことだと思うわ。)
(四葉ちゃん、きみも人を幸せにできるさ。そのうちわかるよ。)
そんな話をしていると、いつもの二人が遊びにやってきました。その日は、ブランコ
もすべり台も使わないで、木のまわりでおにごっこをしたり、草の上に寝ころがったり
して遊んでいるのです。やがて、二人はクローバーを編みはじめました。女の子の方
が上手で、あっというまにかんむりを作りました。
「王様、頭にのせてあげましょう。」
「くるしゅう ないぞ・・・・」
その時です。
「じんくん、変わったはっぱがあるよ。」
「四葉のクローバーだね。かしてごらん。」
四葉ちゃんは、ぬかれてしまいました。
「ようこが、ぬいたはっぱなのに・・・・・じんくんどうするの?」
じんくんと呼ばれた男の子は、かばんから固い表紙の本を取り出して、四葉のクロー
バーを真ん中にはさむと、また本をかばんになおしました。
「どうするの?どうするの?」
「めずらしいクローバーだから、大事にとっておくんだよ。」
「うん、そうだね。めずらしいから大事にとっておこう。」
二人はしばらく遊んで、帰っていきました。
(のっぽさーん・・・・・さようなら・・・・)
(四葉ちゃん、きっときみは人を幸せにできる。そのために生まれてきたんだからね)
(こんなところにはさまれて・・どうやって・・何も見えない、人の顔も見えないのに・・)
(四葉ちゃん、さようなら・・・今日までの毎日が、わたしが幸せだった)
でも、最後の言葉は、もう遠ざかったじんくんのかばんにおさまっている四葉ちゃん
の耳には届いていませんでした。
それから、長い年月が過ぎ去りました。20年という年月にまわりの景色はすっかり
変わりましたが、置き忘れられたように、公園だけが昔のままでした。
のっぽさんの木陰のベンチに、一人の青年がやってきて木を見上げていました。
青年は、まぶしそうに見上げながらつぶやいていました。
「あのころのままだなあ」
そのとき、走ってきたのか息を切らせながら、女の人がやってきました。のっぽさん
には、その明るい笑顔が記憶のどこかにありました。
「おまたせっ。どうしたの?きょうは公園においでって。ずいぶんひさしぶりだけど、
この公園。昔、よく遊んだよね。」
青年は、上着のポケットから小さな箱を取り出しました。
「ダイヤモンドは、買ってあげられないけど、きみを一生守っていくつもりだよ。」
両手で箱をさしだしました。青年は結婚を申し込んだのです。
女の人は、ほほをほんのり染めて
「ありがとう。わたしも、一生ついていくわ。」
そう言って、箱を受け取り、ひざの上で開けてみました。
そこには、プラスティックでコーティングされた四葉のクローバーがついた小さな
リングが入っていました。
「わー、かわいい!もしかして・・これって・・・」
「うん、覚えていたんだね。あの日のクローバーだよ。」
(のっぽさーん・・・・あたしよ・・・)
(四葉ちゃん・・ひさしぶりだね。わたしが言った通りだろう)
(こんなに二人とも幸せそうな顔をして・・・・のっぽさん、わたし役にたったのね)
(そうだよ、人を幸せにすることは、自分が幸せになるということなんだよ。
わたしも、もう年だが、まだまだここでがんばるからね)
のっぽさんと、四葉ちゃんの再会は短いものでしたが、ほのぼのと、心があたた
かくなりました。
あの日の幼かった、じんくんとようこちゃんはすっかり素敵な大人になって、結婚
の約束をしたのでした。
それから、さらに数年の年月がながれ・・・・
古い小さな公園にある大きな木から、毎朝見えるものがあります。
誰かによく似た女の子の、赤いランドセルの横にぶらさがっている、
プラスティックでコーティングされたキーホルダー。走って学校にかけていく、
女の子の背中でゆれる四葉のクローバーのキーホルダー。
毎朝、毎朝、大きな木は、遠ざかっていく女の子を優しくみつめているのでした。
