2010年11月27日土曜日

侵略者

2000年代をふりかえって       ツタは語る

我々はツタ星から遠く蒼く輝いている、地球という星に焦点をあてていた。そのころ、この星を支配していたのは動物だった。動くことの出来ない、食物連鎖の最下層の植物が地球を乗っ取るなどと考える者などいなかっただろう。

実際、我々のサイエンスティックテクノロジーの進歩で、地球に我々と全く同じ生物が存在することを知ることは素晴しい驚きだった。

我々ツタは、動物には聞き取れない微弱な信号を交し合い、地球侵略を進めていった。


「広がれ、広がれ」    「進め、進め」    「覆い尽くせ、覆い尽くせ」

合言葉を ささやきながら、ありとあらゆるものを覆い尽くしていった。木や岩、道路、建物、橋・・・・

鉄もガラスも、プラスティックもどんなものからも栄養を摂ることが出来た。

木は立ち枯れ、ビルディングは傾き、道路や橋も我々ツタで見えなくなっていった。



甲子園から我々の仲間が消えてしまったのは残念であるが、新しい星を乗っ取る開拓者としては、先住民の気まぐれで刈り取られることは仕方のないことだ。



地球人は、テロや戦争にあけくれ、自然破壊を繰り返し、我々の静かなる侵略にも気付くことなく、個々の自由や物欲を追求してやまない生物なのだ。


やがて、10年、20年・・・・・50年が過ぎた。

地球は、加速度のついた温暖化への対応が出来ず、多くの島が水没した。人口増加、食物連鎖の崩壊、生物体系は崩れ去り、わずかに残った陸地には 「ツタ」だけが生い茂っていた。海にわずかな魚類と・・・      やがてすべての生命体が消えていくかのように思われた・・・・あらゆるものを覆い尽くしたツタだけの星! 侵略は成功したのか・・いや・・・我々の誤算が地球乗っ取りを阻止することになったのだ。まるで、オウンゴールのように・・

「ツタ」で覆い尽くしたビル、町、大都市。それこそが、地球の熱を奪い去り、温暖化を阻止する唯一のものだったのだ。瀕死の淵からよみがえった地球は、何事もなかったかのように、また光合成からその歴史を繰り返すのだろうか・・・我々の星にすることは出来なかった。いや、我々が地球を救ったのだ。ほっておけば、自滅していたはずだ。

いつの日にかこの星に侵略者がまたやってくるだろう。  その前に今度こそ滅びているかも・・

我々が見てきた美しい星。滅びるのはもったいないが・・・