海と空の間が薄紫に染まり、それがだんだんオレンジ色を帯びてきた。海に向かって、三つの黒い
人影がずいぶん長く立っていた。森の中は、まだ真っ暗だ。
(イイ ヒトタチノ ホシダッタネ モウ イイヨパパ)
(ウツクシスギル ホシダッタワ アナタ)
(カエロウカ)
アイコンタクトを交し合った三人は空を見上げた。
彼らは、地球からはるか彼方にある星からやって来た。彼らにとって、生きるためには二酸化炭素
が必要で、汚れた空気や水に生存する微生物が栄養源だ。小さい星に人口増加・・・
彼らは、移住する星を探し当てた。 遠く、蒼く光る星「地球」 そこでは、戦争が繰り返され人々は、殺し合い、憎しみあい・・・また産業の発展は、その星の環境を彼らにとって都合の良いものにしていった。 そう考えた、かの星人は地球人の親子に姿を変え、調査にやってきたのだった。
海に近く、森もあり、人もかなり住んでいるらしい、昨日の深夜に着いたその場所は、地球の日本の
北の地「知床半島」というところだった。
夜から朝
(マックラダネ コワイヨ パパ)
(ホラ メガ ヒカッテル キタキツネダヨ)
(モリノ オクニハ ヒグマ トイウ オソロシイ ドウブツガイルラシイ)
朝の光のなかを、長い髪をなびかせて誰かがやってくる。(アア・・ガソリンノ イイニオイ!)
青年は、バイクから降り大きなビニール袋を取り出すと、空き缶などのごみを集めだした。額から大粒の汗が流れ落ち、Tシャツが背中にべっとりとはりついている。しばらく作業を続けてから、腰をおろし、持ってきたおにぎりを食べようとした時、自分をみつめる6つの目に気付いた。
「あれ、仲良く 家族でボランティア?」
「ぼく、おなかすいてない?」
「ほら、あげよ。」
青年は、おにぎりを一つ食べ、残りを「ぼく」に渡してまたバイクに乗って行ってしまった。
午後
三人がしばらく歩いていくと、老人のグループが植樹をしているところに出くわした。真っ黒に日焼けした、深いしわの刻まれた顔で老人たちは、
「どんどん大きくなれよ。」
「わしらの孫、ひ孫のころには大きくなって、秋には葉を落とし、虫が住み、栄養豊かな森になれよ」
と、笑顔で木に語りかけていた。
(オジサンタチハ ナンノタメニ キヲ ウエルノ ?)
「おや、家族で知床に遊びにきただか?」
「おじさんたちは、漁師さ。」
「豊かな森の栄養が、川を下り海に流れ、海でバクテリアは魚を育てるのさ。」
「だから、うんと漁をしても魚がいなくならないように、こうして木を植えるのさ。」
夜から明け方
太陽が傾くころ、やがて三人は湖のほとりにたどり着いた。
深い緑の稜線が、くっきりと湖に映っていた。あまりの美しさにぼう然と見とれている時、目の前の空気を切りさくように通り過ぎていった生き物がいた。
(パパ アレハ ナニ?)
(オオワシ ダヨ)
がさごそと、木の枝がゆれた。
(アノ オトハ ナニ?)
(エゾシカ ヨ)
三人は、少しうなだれながら海岸にたどりついた。もうすっかり夜だった。遠くに、灯台の灯かりが見える。波が寄せては引いていく音を聞きながら、三人は身を寄せ合って眠った。
(コノホシニハ イジュウデキナイネ)
(ヒトモ シゼンモ ヤサシク ウツクシイ)
(ボク コノホシノコニ ナリタイ)
(ボウヤ ソレハ ムリヨ)
(ホラ ミアゲテゴラン ボセンニ カエル ムカエガ ヤッテキタ)
(サヨウナラ シレトコ サヨウナラ チキュウ・・)
朝焼けの虹色の海に、遠く鯨が潮を吹いてゆうゆうと泳いでいた。
